Windows10の機能更新プログラム(FU)のリリースを、用途・対象別に分類したものが、「サービスモデル」です。
バージョン1903からは、SACTが廃止され、SACに統一されています。
リリース当初 |
バージョン1703~ |
バージョン1903~ |
説明 |
IP Insider Preview |
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CB Current Branch
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SACT Semi-Annual Channel(Targeted) 半期チャネル(対象指定)
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SAC Semi-Annual Channel 半期チャネル
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- SACT(旧CB)は主にコンシューマー向け、正式版リリースのパイロット展開という位置づけ。
- SACTリリースから約4カ月後(安定性が高まった状態)、SAC(旧CBB、主に法人向け)がリリースされるという流れだった。
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CBB Current Branch for Business
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SAC Semi-Annual Channel 半期チャネル
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SACTは廃止され、正式版リリースはSAC一本になった。
- 一般のコンシューマーおよびビジネス向け。
- リリース日より18カ月間サポートされる。
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LTSB Long-Term Servicing Branch
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LTSC Long-Term Servicing Channel 長期サービスチャネル
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- 特定用途向け(例えば駅券売機、ATMなど)
- 同一バージョンのまま、リリース日より10年間サポートされる。(FUは提供されず、QU※のみ提供される。)
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※ FU(機能更新プログラム)およびQU(品質更新プログラム)の詳細は、こちらのコラムをご参照ください。
Win10基礎知識 (1) 2つの更新プログラム
「ブランチ(CB・CBB)」から「チャネル(SACT・SAC)」に変わったのはなぜ
CBBという名称に慣れてきた頃、SACという呼び名が登場して、混乱された方も多いのではないでしょうか。これが、2017年7月のことでした。
サービス名称が変更された背景としては、Microsoft社が、「Office 365 ProPlus」と「Windows 10」 を同時に展開する顧客に配慮して、両者のリリーススケジュールと名称を統一することに決めたためです。そこで、Office 365で使われていた「チャネル」という名称を、Windows10でも採用することになり、SAC(Semi-Annual Channel、日本語表記は「半期チャネル」)、SACT(日本語表記は「半期チャネル(対象指定)」)という名称が登場しました。
2019年5月リリースのWindows10バージョン1903からは、SACTが廃止され、SACに統一されました。これは、Microsoft社の意図に反して、SACTとSACが別々の「リリース」であるという誤った認識が世の中に浸透してしまったという背景があります。
SACとSACTの概念は、更新プログラムを適用するタイミングの違いであるにもかかわらず、結果的に、一部のソフトウェアベンダーにおいて「SACがリリースされてからテストを開始する」「SACがリリースされてからサポートを開始する」といった事態が発生してしまったとMicrosoft社は述べています。そこで、こうした混乱を解決するために、SACTが廃止され、SACへ統一されることとなりました。
これにより、今後一般企業の選択肢は、18カ月間のサポートが提供される「SAC」と、10年間固定の「LTSC」の2本立てになり、シンプルでわかりやすくなりました。
Windows10の機能更新プログラム(FU)は、SACを介して毎年3月と9月の年 2 回リリースを予定しており、バージョン1903以降のサポート期間は以下の通りアナウンスされています。
エディション |
3月リリースのFU(バージョン**03) |
9月リリースのFU(バージョン**09) |
Pro |
リリース日から18カ月 |
Enterprise |
リリース日から18カ月 |
リリース日から30カ月 |
ですが、実際のリリースは、事前のテストプラグラムであるIPの検証結果により多少遅れます。よって、詳細な日付は以下のとおり、都度、Microsoft社の公式発表を確認する必要があります。
Windows10バージョン |
1903 |
1809 |
1803 |
1709 |
リリース日 |
SACT |
- |
2018/11/13 |
2018/4/30 |
2017/10/17 |
SAC |
2019/5/21 |
2019/3/28 |
2018/7/10 |
2018/1/18 |
サービス終了日 |
Pro |
2020/12/8 |
2020/5/12 |
2019/11/12 |
2019/4/9 |
Enterprise |
2020/12/8 |
2021/5/11 |
2020/11/10 |
2020/4/14 |
Windows10バージョン1903の「Windows Update for Business」ポリシー設定画面を見ると、プルダウンの選択肢から「半期チャネル(対象指定)」(SACT)がなくなり、以下の4つになりました。
- 半期チャネル(SAC)
- プレビュービルド-ファスト(IP)
- プレビュービルド-スロー(IP)
- リリースプレビュー(IP)
(テストプログラムであるIPは、適用時期により3パターンに分かれています)
画面例 「Windows Update for Business」のポリシー設定
企業(または組織)がWindows10の機能更新プログラムの適用時期を制御する方法としては、以下のようなものがありますが、今回のSACT廃止が影響するのはWUfBになります。
- WUfB(Windows Update for Business)
- WSUS(Windows Server Update Services)
- SCCM(System Center Configuration Manager)
1903以降は、SAC・SACTの選択がなくなったので、SACのリリース日を基準として、そこからの延期日数を指定するだけのシンプルなものになりました。
バージョン1903が適用されるのはいつ?
WUfBの設定画面で、SACを選択している場合、1903の機能更新プログラムはいつ適用されるのでしょうか?
これまで、SACTのリリースから4カ月程度の猶予があったのですが、1903では最初からSACがリリースされているので注意が必要です。例えば「SACTをシステム部門で検証してから、SACを全社展開する」という運用をしてきた企業では、1903にバージョンアップするタイミングで、いきなりSACが全社展開されてしまうという事態にもなりかねません。
そこでMicrosoft社は、「SAC のブランチ準備レベルで構成済みのデバイスの場合、バージョン 1903 へのアップグレードにのみ、60 日の遅延日数をマイクロソフトが追加します。」※とアナウンスしています。
SACTを選択している場合
従来と何も変わりません。1903のリリース日(2019年5月21日)から、お客様が指定した「延期日数」が経過すると更新プログラムが適用されます。
(旧SACTがそのまま新SACに読み替えられるイメージです。)
SACを選択している場合
1903のリリース日(2019年5月21日)から、『お客様が指定した「延期日数」+60日』が経過すると更新プログラムが適用されます。
例えば、現在SACを選択し「延期日数:30日」を指定している場合は、1903のリリース日(2019年5月21日)から90日(お客様指定の30日+マイクロソフトが追加した60日)後に、更新プログラムが適用されます。
※ マイクロソフトによる追加日数は、WUfBの画面上には反映されない点にご注意ください。またこの措置は、バージョン1903にアップグレードされるときに限ったもので、バージョン1903より後のバージョンアップでは追加はされません。
1903へのアップグレードが完了したら「延期日数」の設定見直しを
これまで「SACTを検証用、SACを全社展開用」として利用してきたような企業では、1903以降は「延期日数」の設定のみでコントロールすることになります。
そこで、1903へのバージョンアップが済んで新しい設定画面が反映されましたら、次のバージョンアップに備えて、お客様の運用に即した「延期日数」へ設定しなおすことをお薦めします。
(例えば、システム部門では0日、各部門のITリーダーでは30日、全社PCは60日、といった具合です。)
※ 本記事は、2019年6月時点の情報を基に作成しております。Microsoft社の方針によっては、変更が生じる場合がございます。
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参考サイト
Microsoftサイト>Windows Update for Business と SAC-T の終了についての更新情報