サイバー攻撃が巧妙化する現代において、パスワードだけに頼ったセキュリティ対策には限界があります。
こうした状況を受けて、「多要素認証」「二要素認証」「二段階認証」といった認証の仕組みが注目されています。ただし、名称が似ていることもあり、それぞれの違いが分かりにくく混同されがちです。
そこで本記事では、それぞれの認証方式の定義と仕組み、具体例、違いの比較をわかりやすく解説します。

サイバー攻撃が巧妙化する現代において、パスワードだけに頼ったセキュリティ対策には限界があります。
こうした状況を受けて、「多要素認証」「二要素認証」「二段階認証」といった認証の仕組みが注目されています。ただし、名称が似ていることもあり、それぞれの違いが分かりにくく混同されがちです。
そこで本記事では、それぞれの認証方式の定義と仕組み、具体例、違いの比較をわかりやすく解説します。

現在の情報セキュリティでは、単一の認証方式では不十分とされ、複数の認証要素を組み合わせる方法が主流になりつつあります。サイバー攻撃の多くはパスワードの盗用や推測から始まることが多く、複数の認証要素を用いることでリスクを大幅に軽減できます。
認証方式は、次の3つの要素に分類されます。これらを組み合わせることでセキュリティを強化できます。
多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)とは、上記の認証要素のうち2種類以上を組み合わせて行う認証方式です。たとえば「パスワード(知識情報)+スマホ(所持情報)+顔認証(生体情報)」のように複数の要素を組み合わせることで、1つの要素が漏れても他の要素が防壁となり、不正アクセスのリスクを大きく下げられます。
企業のクラウドサービスや社内システムなど、重要な情報を扱う場面では多要素認証の導入が推奨されています。近年ではIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」や、ランサムウェア対策の一環として検討する企業が増えています。
多要素認証については、以下の記事でより詳しく解説しています。
多要素認証(MFA)とは?3つの認証要素と導入のメリット・選び方
参考:
独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンター|中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン第3.1版(参照2026年1月12日)
二要素認証(2FA:Two-Factor Authentication)は、多要素認証の一種で、異なる2種類の認証要素を組み合わせて認証を行う方式です。たとえば「パスワード(知識情報)+スマートフォン(所持情報)」などが該当します。多くのオンラインサービスでは、ログイン後にSMSでワンタイムパスワードを送信する方式や、認証アプリを用いた方式が一般的です。
多くのオンラインサービスでは、ログイン後にSMSでワンタイムパスワードを送信する方式や、認証アプリを用いた方式が一般的です。 これらは、ユーザーの利便性とセキュリティのバランスが取れた方式として、リモートアクセスやクラウドサービスにおける基本的なセキュリティ対策と位置づけられています。
二段階認証(2SV:Two-Step Verification)は、認証を2回行う方式を指しますが、必ずしも異なる認証要素を使用するとは限りません。たとえば「パスワード(知識情報)+秘密の質問(知識情報)」という組み合わせでも二段階認証に該当します。
そのため、名称のイメージとは異なり、セキュリティ強度は実装内容に大きく左右されます。「二段階」という言葉から安全性が高いと誤解されやすいため、利用時にはどの認証要素が使われているかを確認することが重要です。
| 認証方式 | 使用する要素 | 安全性 | 利便性 | 代表例 |
|---|---|---|---|---|
| 多要素認証 | 2種類以上の異なる要素 | 非常に高い | やや低い | パスワード+認証アプリ+顔認証 |
| 二要素認証 | 異なる2種類の要素 | 高い | 高い | パスワード+SMS/パスワード+認証アプリ |
| 二段階認証 | 種類を問わない2つの要素 | やや低い~高い(内容により変動) | 高い | パスワード+秘密の質問 |
3つの認証方式は名称が似ているため混同されがちですが、見極めのポイントは「何段階の認証か」ではなく、「どの種類の認証要素を使っているか」です。 代表例については、次の章で解説します。
それぞれの認証方式について、実際によく使われる組み合わせとその特徴を見ていきましょう。
認証要素は知識情報+所持情報+生体情報で、多要素認証に該当し、高いセキュリティ強度を誇ります。 スマートフォンにインストールした認証アプリを活用することで、オフラインでも認証が可能となり、実用性と安全性を兼ね備えた構成として普及が進んでいます。金融機関や重要インフラ、機密情報を扱う企業での採用が増えています。
認証要素は知識情報+所持情報で、二要素認証に該当します。 比較的導入しやすく多くのWebサービスで採用されていますが、SMSの盗み見や転送設定の悪用といったリスクも指摘されています。それでもパスワード単独と比べれば格段に安全性が向上するため、現実的な選択肢として広く利用されています。
認証要素は知識情報+所持情報で、二要素認証に該当します。 Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorなどの認証アプリを使う方式で、SMS認証よりも安全性が高いとされています。オフラインでも認証コードを生成できるため、通信環境に左右されない点も利点です。
認証要素は知識情報+知識情報で、異なる要素を使っていないため、二要素認証ではなく二段階認証に該当します。 認証要素がどちらも知識情報のため、セキュリティ強度は高くありません。特に秘密の質問の答えはSNSなどから推測されやすいため、近年では推奨されない傾向にあります。
認証方式を選定する上で、セキュリティの強度だけでなく、コストや運用負荷、業務への影響なども重要な判断軸です。この章では、意思決定に役立つ比較ポイントを整理します。
3つの認証要素すべてを使う構成も可能で、極めて高いセキュリティレベルを実現できます。特に標的型攻撃やなりすましが想定される環境では最適な選択肢です。 たとえば、仮にパスワードが漏洩しても、残り2つの要素(所持情報・生体情報)が残るため、不正アクセスは極めて困難になります。実際に、Microsoft社の調査によれば、多要素認証を導入することでアカウント侵害攻撃の99.9%以上を防ぐことが可能とされています。
ただし、認証方式が増えるほどユーザーの操作負担も増加するため、頻繁にログインが必要な業務では生産性への影響も考慮が必要です。
異なる2つの認証要素を使うため、1要素だけの認証に比べてセキュリティは格段に強化されます。コストと運用のバランスが良く、多くの企業にとって現実的な選択肢です。 セキュリティと利便性のバランスが優れており、ログイン時間は10秒〜30秒程度に抑えられるため、業務効率への影響を最小限にしながら高いセキュリティを確保できます。
同じ種類の認証要素を2回使う場合もあり、セキュリティレベルは実装内容に大きく左右されます。より高い安全性を確保するには、異なる要素を組み合わせる構成が望ましいと言えます。 重要なのは「段階の数」ではなく「要素の種類」です。同じ知識情報を2回使う場合、フィッシングサイトで両方とも盗まれるリスクがあるため、パスワード単体と比べて劇的な安全性向上は期待できません。
システム開発や運用設計に手間がかかるため、ある程度のITリテラシーや予算が求められます。初期コストとしては、生体認証デバイス(指紋リーダー、顔認証カメラなど)やセキュリティキーの費用に加えて、システム改修費用や、ユーザー教育やサポート体制の構築費用も必要になります。 ただし、初期導入のハードルは高いものの、長期的には不正アクセスによる被害を未然に防ぐことで、結果的にコスト削減につながるケースも多くあります。
比較的スムーズに導入できるケースが多く、SMSや認証アプリを活用すれば、大規模なシステム改修は不要な場合もあります。コストと効果のバランスが優れているため、多くの企業で採用が進んでいます。 既存のスマートフォンを活用した認証アプリ方式であれば、追加のハードウェア購入が不要で初期費用を大幅に抑えられます。また、ユーザーが日常的に使い慣れたデバイスを利用するため、操作説明や教育にかかる時間も最小限で済みます。
導入負荷が最も小さく、既存のログインプロセスに簡単に追加できます。スモールスタートや短期導入を希望する組織に適しています。 既存システムへの追加実装のみで完結するため、開発工数は最小限で済みます。特に、メールでの確認コード送信など、特別なデバイスを必要としない方式であれば、追加コストはほぼゼロで導入可能です。
業種や扱う情報の性質によって、求められるセキュリティレベルは異なります。ここでは代表的なパターンを紹介します。
高度なセキュリティが求められる業界では、ガイドライン等により多要素認証や二要素認証の導入が求められるケースが多く、事実上の標準的な要件となりつつあります。
特に医療業界では、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版」において、「利用者認証にパスワードを用いる場合には、令和9年度時点で稼働していることが想定される医療情報システムを、今後、新規導入又は更新するに際しては、二要素認証を採用するシステムの導入、又はこれに相当する対応を行うこと。」と規定されています。
つまり、新たに導入または更新される医療情報システムには、原則として二要素認証(多要素認証)の採用が求められているのです。
参考:
厚生労働省|医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版(参照2026年1月13日)
リソースや予算が限られる場合でも、SMS認証や認証アプリを用いた二要素認証で十分なセキュリティを確保できます。まずはVPNやクラウドサービスなど外部接続を伴うシステムから優先的に導入し、段階的に社内システムへ展開する方法が効果的です。 特に、管理者アカウントや機密情報を扱う部署(経理・人事など)から先行導入すれば、リスクを効率的に低減できます。
セキュリティに不慣れな環境では、まずは二段階認証から導入し、徐々に強化していく方法も有効です。ただし、できる限り早い段階で異なる認証要素を組み合わせた二要素認証への移行を検討することが推奨されます。
本記事では、3つの認証方式について、基礎的な仕組みから具体例、違いの比較、選び方、導入の注意点まで解説しました。
どの方式が自社に適しているかを判断するには、情報の機密性、ユーザー数、管理体制など、複数の要素を総合的に考慮することが重要です。また、認証方式の導入は「点」ではなく「線」で捉えるべきでしょう。システムやデバイスの管理、社員教育、運用監視といったトータルのIT運用と連動してはじめて、セキュリティ体制が強固なものになります。
三菱HCキャピタルITパートナーズでは、PCの導入から運用、廃棄に至るまでのライフサイクル全体を支援する「PCLCMサービス」を提供しています。認証の仕組みを強化する際にも、こうした運用全体を見渡した支援サービスの活用が、自社の負担を軽減し、より効果的なセキュリティ対策へとつながるのです。
ぜひ、セキュリティ強化の第一歩として、認証方式の見直しとあわせて、IT運用体制全体の最適化をご検討ください。