PCやIT機器の導入時に必要なキッティング作業は、情報システム部門にとって大きな負担となっています。一般的に、1台あたりのPCキッティングには2〜3時間程度かかるといわれており、100台規模の導入では200〜300時間もの作業時間が発生します。そのため、新入社員の大量採用やオフィス移転時など、通常業務に影響を与えるケースも少なくありません。
そこで注目されているのが「キッティング代行サービス」です。
本記事では、キッティング代行の基本的な仕組み、利用するメリット・デメリット、代行業者選定のポイントや費用相場について解説します。キッティング業務の効率化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
キッティング代行とは?メリット・デメリットや業者選びのポイントを解説
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1. キッティング代行とは?基本的な仕組みとサービス内容
キッティング代行は、近年多くの企業が活用している業務効率化の手法の一つです。まずは、その基本的な仕組みとサービス内容について詳しく見ていきましょう。
1-1. キッティング代行サービスの概要
キッティング代行とは、PCやタブレット、スマートフォンなどのIT機器を、業務利用可能な状態に設定する作業を専門業者に委託することです。社内対応の場合は情報システム部門の担当者が通常業務の合間に対応することが多く、品質のばらつきや作業遅延が生じやすいという課題がありました。
キッティング代行サービスでは、専門的な知識と経験を持つ技術者が、標準化された手順で作業を行うため、品質の安定化と作業期間の短縮が可能になります。テレワークの普及による端末の追加調達や、セキュリティソフトの複雑化など、キッティング作業の負荷が増大している中で、こうした専門性を持つサービスへの関心が高まっています。
1-2. 代行可能な作業内容
キッティング代行サービスでは、PC導入に必要なほぼすべての作業を委託できます。
基本的なセットアップ作業
OSの初期設定、ユーザーアカウントの作成、ネットワーク設定など、基本的な設定を行います。
ソフトウェアインストール・設定
業務に必要なOfficeソフトやアプリケーション、各種ツールなど、企業の要件に合わせたソフトウェアをインストールします。
セキュリティ対策
ウイルス対策ソフトのインストールやファイアウォール設定、パスワードポリシーの適用、暗号化設定などを実施し、企業のセキュリティ基準に準拠した状態に仕上げます。不要なサービスの無効化や管理者権限の制限なども含まれ、情報漏洩リスクを最小限に抑える設定を行います。
動作確認・検証
基本的なハードウェアの動作確認や初期不良がないかをチェックし、納品前の最終確認を実施します。
配送・設置作業
キッティング完了後のPCを利用者の手元まで届け、必要に応じて設置やネットワーク接続の確認も行います。テレワーク環境では、従業員の自宅への直接配送できるケースもあります。
より詳細な作業手順やコツなどについては以下の記事で解説しています。
2. キッティング代行のメリット・デメリット
キッティング代行を導入する際は、メリットとデメリットの両面を理解しておくことが大切です。
2-1. キッティング代行の主なメリット
情報システム部門の負荷軽減
1台あたり2〜3時間を要するとされる作業を外部に委託することで、担当者は本来のコア業務に集中できるようになります。新入社員の大量採用時期や、オフィス移転時などでは、数百時間の作業時間を削減でき、情シス部門の負担を大幅に軽減することが可能です。
専門性による品質向上
キッティング代行業者は、専用の作業環境と熟練した技術者、標準化された作業手順を保有しています。このため、社内で行う場合と比べて作業品質が安定し、設定ミスや漏れを大幅に削減することが可能です。また、技術者は最新のIT動向にも通じており、業務に適した設定を反映することで、品質と実用性を兼ね備えたIT環境を実現できます。
セキュリティレベルの向上
専門業者は企業が求める高度なセキュリティ要件に精通しており、適切なセキュリティ設定を効果的に実施できます。また、最新の技術動向に対応した設定や、キッティング作業環境自体も高いセキュリティ基準で管理されているため、情報漏洩リスクを最小限に抑えながら作業を進めることができます。
2-2. 注意すべきデメリット・リスク
外注コストの発生
1台あたり数千円から数万円程度の費用がかかるため、大量導入時には相当な予算が必要になります。ただし、社内作業にかかる人件費や作業遅延によるビジネス影響を考慮すると、総合的にはコスト削減につながるケースも多く見られます。
情報漏洩リスク
企業の機密情報や個人情報を含む可能性があるIT機器を外部業者に預けるため、適切なセキュリティ対策を講じている業者を選ぶ必要があります。契約時には情報管理体制や責任範囲を明確にし、万が一の場合の対応についても事前に取り決めておくことが重要です。
内製化能力の低下
キッティング作業を継続的に外部委託することで、社内にノウハウが蓄積されにくくなり、将来的な内製化が困難になる可能性があります。さらに、業者への依存度が高まると、契約条件の変更や業者変更時に大きな影響を受けるリスクも考えられます。ただし、適切な作業手順書やマニュアルの提供を受けることで、こうしたリスクは軽減することが可能です。
3. キッティング代行業者の選び方と重要なポイント
キッティング代行業者を選ぶ際は、複数の観点から比較検討し、自社に最適な業者を選定することが重要です。
3-1. 対応規模と納期の確認
予定している導入台数に対応できるかを必ず確認しましょう。業者によって対応可能台数には差があり、小規模な業者は数十台程度が限界の場合もあれば、大手業者では数千台規模の対応も可能です。また、予定台数が変動する可能性がある場合は、急な追加依頼への対応についても事前に相談しておくことが大切です。
加えて、納期も重要な確認事項です。新入社員の入社日や新オフィスの開設日など、決められた期日がある場合は、余裕をもったスケジュールで依頼することをおすすめします。とくに繁忙期には納期が延びる可能性もあるため、早めに相談するようにしましょう。
3-2. セキュリティ対策と品質管理
作業環境への入退室管理、監視カメラの設置、データの暗号化、作業者の身元確認など、具体的な対策内容を確認しましょう。また、ISO27001といった第三者認証の取得状況も参考になります。品質チェック体制についても、作業手順書の有無、ダブルチェック体制、品質管理責任者の配置などを確認することが重要です。
3-3. 作業範囲とアフターサポート
基本的なキッティング作業の範囲に何が含まれるのか、追加料金が発生する作業は何かを明確にしておくことが求められます。たとえば、特殊なソフトウェアのインストールや個別設定、周辺機器の接続などは別料金になる場合があります。
また、配送・設置に関するサービス内容も確認しておきましょう。キッティング完了後のPC配送、利用者への直接配送、設置作業、初期トラブル対応などが提供されているかどうかは、スムーズな運用に関わる重要なポイントです。とくにテレワーク環境では、従業員の自宅への直接配送サービスの有無が業務効率に直結します。
さらに、キッティング後の初期不良対応、設定変更要求、追加ソフトウェアのインストールなど、アフターサポートの範囲と対応スピードもあらかじめ確認しておくと安心です。
3-4. 柔軟性と対応力
見積や計画段階で、個別の要件にどの程度対応してもらえるかを確認しましょう。企業によってキッティングの要件は大きく異なるため、基本的なサービスに加えて、カスタマイズ対応が可能かどうかが重要な判断基準となります。
加えて、特殊な業務用ソフトウェアのインストール、個別のセキュリティ設定、異なるOSバージョンへの対応など、自社特有の要求に対してどこまで対応してもらえるかを事前に確認しておきましょう。また、複数の部署で異なる設定が必要な場合の対応力も、スムーズなプロジェクト進行のために必要な要素です。
4. キッティング代行の費用相場と費用対効果の考え方
キッティング代行の費用は作業内容や台数によって大きく変動します。適切な予算計画を立てるために、まずは費用相場を把握しておきましょう。
4-1. 費用相場
基本的なキッティング作業で、PC1台あたり4,000円〜6,000円程度が相場です。この価格帯には、OS初期設定、基本ソフトウェアのインストール、ネットワーク設定などが含まれます。ただし、作業内容や業者によって幅があるため、詳細な見積もりを依頼することが大切です。
また、大量発注時には単価が下がる傾向があります。一方で、特殊なソフトウェアのインストールや個別設定が必要な場合は追加料金が発生することがあります。
さらに、配送費、設置費なども別途必要になる場合があるため、複数社に問い合わせて総額で比較検討することが重要です。
4-2. 費用対効果の考え方
キッティング代行の費用を評価する際は、外注費用と社内で作業を行った場合のコストを比較することが重要です。たとえば、時給3,000円の担当者が3時間かけてキッティングを行う場合、人件費だけで9,000円になります。これに加えて、作業環境の準備コスト、品質リスク、機会損失なども考慮すると、代行サービスの費用対効果は高いといえるでしょう。
さらに、自社で作業を行う場合には、作業ミスによる再作業コスト、トラブル対応時間、品質ばらつきによる後続業務への影響といった隠れたコストも発生する可能性があります。代行サービスを利用することで、これらのリスクを大幅に削減できるため、表面的な料金以上の価値があるケースが多いといえます。
まとめ
キッティング代行サービスは、情報システム部門の負荷軽減と作業品質向上を同時に実現できる有効な解決策です。専門業者に委託することで、大量のキッティング作業を短期間で高品質に完了でき、社内リソースをより戦略的な業務に集中させることができます。ただし、業者選定には対応規模、セキュリティ対策、費用体系など複数の要素を総合的に検討することが重要です。
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